ブログ&コラム

都市部のマンション調査から浮き彫りになる実態や、直面する課題とは?

コラム

都市計画やまちづくりの調査が専門の(株)都市ネットは、主に都市部のマンション調査を行っております。

都市部を中心に、日本各地で中高層の集合住宅が建築されています。

一般的に「マンション」と呼ばれるこの建物群は、都市計画やまちづくりに関わる当社にとっては重要な調査対象です。

今回はこのマンションの実態調査業務についてご紹介していきます。

Contents

  1.マンションの実態調査も都市計画の重要な要素

  2.マンションの調査を行う際の注目点
   ① 旧耐震基準のマンション
   ② 管理体制の確認
   ③ 住民の構成

  3.調査から導き出される課題
   ① 地域コミュニティの希薄さ
   ② ライフスタイルの違いとマンションの使用・管理状況
   ③ 独居高齢者の問題

  4.まとめ

1.マンションの実態調査も都市計画の重要な要素

当社では、都市部の自治体からの依頼で地域内のマンションの実態に関する調査をしております。

マンションとは、国土交通省によると3階建て以上の集合住宅のことで、鉄筋や鉄筋コンクリートなどが用いられている強固な建造物であることが特徴です。

日本では後復興期から高度経済成長期にかけて都市部へ労働人口が流入すると、住居問題を解決する目的で各地にマンションが建てられるようになりました。

はじめは都市部に建てられていたものが、徐々に郊外にも広がっていきます。

かつての団地や単身者向けのワンルーム、近年では高層ビルタイプまで、さまざまなタイプのマンションが建設されてきました。

こうしたマンションに関する調査では、例えば、ある地域のマンションの総数や戸数、またその入居構成、築年数、世代的特性などを把握します。

これらは地域計画の策定や行政サービスの遂行において欠かせないものです。

2.マンションの調査を行う際の注目点

都市部におけるマンションの調査で頻繁に取り上げられるテーマについて、ここで少しご紹介してみたいと思います。

各地に建てられているマンションの中には、50年以上前に建設されたものもあります。

マンション調査を行う上で常に留意する点の一つとして、旧耐震基準のマンションであるかどうかです。

1981年6月1日に施行された改正建築基準法では、新しい建築基準として震度6強から7程度でも倒壊しないことが求められました。

それ以前の基準が震度5程度であったのに比べるとかなり厳しくなったことがわかります。

同年5月31日までに建築確認が出ている建物については旧耐震基準であり、耐震診断や改修工事が必要な場合があります。

これは特に防災の観点で調査を行う際には必ずチェックしなければならない項目となります。

管理体制が整備されているのかということも重要なポイントです。

例えば、管理組合が組織され、管理規約の作成、定期的な総会の開催、長期修繕計画の作成や見直し、修繕積立金が適正であるかどうかにより、修繕や改修がスムーズに実施できるかどうかが変わります。

特に近年は災害が多発し、防犯の観点からも重要な視点です。

かつては三世代で生活することが当たり前だった時代から、次第に夫婦のみ、また親と子どもで構成される「核家族」が都市部やその近郊では多数派の世帯構成になりました。

そしてさらに多様化の進む現代では、独身者の世帯や高齢者のみの世帯などが増えています。

どのようなマンションに、どのような住民が暮らしているのか。

隣近所との関係性が希薄化している時代だからこそ、その傾向を組合員名簿や居住者名簿等で把握しておくことが大切なのです。

.調査から導き出される課題

マンションの調査により導き出される課題には、自治体が都市計画の策定やまちづくりの検討を行う上で把握しておくべき重要な論点が含まれています。

ここではそのいくつかをご紹介していきます。

マンションのような集合住宅に限らず、戸建て地域も含めた傾向として、地域コミュニティが希薄化しています。特に都市部では近隣住民の顔や名前を知らないといことが珍しくなくなりました。

こうした状況を受けて、防犯や社会的弱者の見守りなどの側面から、地域コミュニティ活動やデジタル技術を活用した見回り活動の展開など、新しい取り組みも始まっています。

都心に建てられているマンションは、独身率が高く、分譲よりも賃貸が多いというケースが相対的に多い印象があります。

また、築年数の古いマンションには高齢者が多く入居している傾向が強いとも言えます。

このように、入居者の世代や単身/家族といった構成の偏りがある場合には、他者への配慮や管理組合の運営の難しさなど、集合住宅の運営に困難を来たす可能性があります。

地域内のマンションの使用・管理状況を把握しておくことは行政としても重要な取り組みです。

少子高齢化が進む日本で、高齢者のみの住宅は珍しくありません。

ところが、地域コミュニティの希薄化や独居高齢者(65歳以上の単身世帯)の増加は、お互いに見守り合う機会を減らし、緊急時に迅速な対応をすることが難しくなるリスクがあります。

以下の表は、高齢者の単身世帯率を示したものです(※1)。

この表からもわかるように、今後はその割合がさらに大きくなると予想されています。

※1 総務省行政評価局「令和5年 一人暮らしの高齢者に対する見守り活動に関する調査」

また、単身高齢者の場合、総世帯と比較してもふだん親しくしている友人・仲間が少なくなる傾向があることを示す調査結果もあります(※2)

※2 内閣府「令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果」

高齢者が多く居住するマンションの把握は、高齢者への支援について検討する根拠にもなっています。

3.まとめ

いかがでしたでしょうか。

当社では都市部の自治体を対象に、各地域の特性を踏まえたマンションの実態調査を行っております。

これらは当社が行う都市計画やまちづくりに関わる重要な調査です。

当社は今後も都市のあり方を考えながら、問題意識を持って調査を行っていきたいと思います。

お気軽にお問い合わせください