「ドローン」と「空の安全」
ここ数年でドローンをとりまく環境は、良くも悪くも大きく変化してきています。
海外製品が主流だった数年前に比べて、国産メーカーの開発も進みました。メーカーの開発競争が加速するなかで機体の機能・性能も著しく進化したことにより、様々な分野でのドローンの活用がみられるようになってきました。
一方で、ウクライナ戦争等での報道にあるように、軍事利用もまたドローンの活用方法の一つなのです。
もともとドローンは軍事目的で開発されたため、軍事利用されるのはある意味必然なのですが、「ドローン=戦争」というイメージを持たれてしまうのは非常に残念なことです。
都市ネットでは、農薬散布や赤外線点検、空撮などのサービスを展開しておりますが、安全に活用することで皆様のお役に立てるアイテムだということをもっともっと多くの方に知っていただきたいのです。
というわけで今回はドローンが飛行している場面を見ているだけでは分からない「ドローンの安全性」について、ドローン操縦士の立場からお伝えしてまいります。
2.~法律・ルールの安全対策~ 空の安全を取り締まる
① 飛行禁止空域
② 飛行の際に遵守すること
③ 禁止となる飛行方法
④ 登録制度
3.~機体の安全対策~ 製造メーカーの空の安全にかける想い
① フェールセーフ機能
② バッテリー残量警告
③ 障害物回避機能
④ ジオフェンス機能
⑤ パラシュート機能
1.空を飛ぶということ・・・
はじめに皆様へお伝えしなければならないことは、
ドローンは落ちる!
ということです。
いきなりで驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、ドローンは空を飛ぶものであり、この地球に重力がある以上、「ドローンは落ちる」ということを避けられないのも事実なのです。
しかし、様々な安全対策をとることで、ドローンの事故はゼロに近づけることが可能です。このコラムでは様々な側面における安全対策についてお伝えします。
ドローンにあまり関わったことがない方や、なんとなくドローンって怖いというイメージをお持ちの方に、ドローンの安全性について少しでも知っていただきたいと思っています。
2.~法律・ルールの安全対策~ 空の取り締まり
現在、国内でドローンを飛行させる時には、「航空法」をはじめとする様々な法律が関わってきます。
例えば「航空法」では、飛行させていけない空域や、禁止される飛行方法、機体の登録制度を設けることで、操縦士が適正なドローンの運用を行い、飛行の安全、飛行に起因するトラブルを防止しています。
ここでは、そのような「航空法」の内容を簡単にご紹介いたします。
①.飛行禁止空域
下記4空域ではドローンの飛行が原則禁止されています。
出典:国土交通省ウェブサイト (https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000041.html#kuuiki)
a.空港等の周辺
空港やヘリポート周辺の、航空機の離陸及び着陸の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が告示で定める空域
b.緊急用務空域
警察、消防活動等緊急用務を行うための航空機の飛行が想定される場合に、無人航空機の飛行を原則禁止する空域
c.150m以上の上空
地表又は水面から150m以上の高さの空域
d.人口集中地区の上空
5年毎に実施される国勢調査の結果から一定の基準により設定される、人口密度の高い地域
②.飛行の際に遵守すること
出典:国土交通省ウェブサイト (https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000041.html#kuuiki)
a.飲酒時の飛行禁止
アルコール又は薬物等の影響下で飛行させないこと
b.飛行前確認
ドローンの飛行に支障がないこと、その他飛行に必要な準備が整っているか確認すること
c.衝突予防
航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するよう飛行させること
d.危険な飛行の禁止
他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと
③.禁止となる飛行方法
下記の6つの方法で飛行することは、場所にかかわらず原則禁止されています。
出典:国土交通省ウェブサイト (https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000041.html#kuuiki)
a.夜間飛行
日中(日出から日没)に飛行させなくてはならない
b.目視外飛行
目視(直接肉眼)の範囲内でドローンとその周囲を常時監視して飛行させなくてはならない
c.人・物件との距離が30m未満の飛行
人(第三者)又は物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上の距離を保って飛行させなくてならない
d.イベント上空の飛行
祭礼、縁日など多数の人が集まる催しの上空で飛行させてはならない
e.危険物輸送
爆発物など危険物を輸送してはならない
f.物件投下
ドローンから物を投下させてはならない
上記の方法でドローンを飛行させる場合は予め国土交通省地方航空局長の承認を受ける等の必要があります。
④.登録制度
2022年6月より、ドローンの機体ごとの登録、またリモートIDの搭載が、義務化されました(100g以上の機体)。
これにより、未登録の機体を屋外で飛行させた場合は、航空法に基づき1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
この登録制度は、不適切な飛行事案において機体の所有者を特定できなかった課題を解決する他、そもそも安全上問題のある機体の登録を回避し、安全を確保することが目的です。
リモートIDは飛行中であってもドローンの登録の有無・無許可飛行などを判別することが可能です。
出典:国土交通省ウェブサイト (https://www.mlit.go.jp/koku/koku_ua_registration.html)
以上、紹介した内容以外にも「小型無人機等飛行禁止法」や「電波法」「条例」など様々な法律やルールによって空の安全は守られており、操縦士はこれらを遵守しなくてはなりません。
3.~機体の安全対策~ 製造メーカーの空の安全にかける想い
ドローンを操縦したことがない方にとっては、「操縦は難しくて、危ないんじゃないの?」と思われる方がいるかもしれませんが、現在国内で販売されているドローンには、事故を未然に防ぐための様々な警報や緊急時対策が備わっています。
機体からの声にキチンと耳を傾けて操縦することで、高いレベルでの安全対策がなされるのです。
それではドローンの安全装置を5つご紹介いたします。
① フェールセーフ機能
操縦中に期待に異常が生じた場合に、危険を回避するための機能です。バッテリー残量の低下や、機体と送信機の電波が途切れてしまうなどの異常が発生すると、自動帰還機能や、その場に着陸するなどの操作が自動で発動します。
② バッテリー残量警告
バッテリーがなくなればドローンは墜落します。この機能は、ある一定のバッテリー残量になると警告音などで操縦士にバッテリー電圧の低下を知らせてくれる機能です。
その警告を無視して飛行したとしても、更にある一定の残量になると離陸地点まで自動的に帰還する等の機能(フェールセーフ機能)が、強制的に発動する仕組みになっています。
③ 障害物回避機能
ドローンに搭載されたセンサー等で周囲の空間を認識します。
障害物を検知すると、警告音を発生させたり、自動でブレーキをかけたりするなど、障害物との衝突を防止する機能です。
④ ジオフェンス機能
あらかじめ設定したエリアの外へドローンが飛び出さないよう、見えない壁を作るイメージの機能です。
離陸地点を基準に高度と距離を設定して、操縦士から不意に離れることを防止します。
⑤ パラシュート機能
様々な安全機能が働いていても、絶対に墜落しないドローンはありません。
ドローンが墜落する事態に陥った場合にはパラシュートが開き、人・物件に対するダメージを軽減する機能です。
その他にも緊急停止や高温度警告など数多くの機能により、操縦士が安全に飛行を行う手助けをしてくれています。また、以前はフレームアームという部分のロックが解除されたまま飛行しないよう、操縦士が見る画面に警告が表示されていました。
この機能が、最新機種ではセンサーを搭載することで、ロックが解除された状態ではプロペラが回らない仕様となり、人間のうっかりによる事故を防止する機能が搭載されています。
このようなことからも、製造メーカーの安全に対する想いがうかがえます。
4.~身体と心の安全対策~ 操縦士1人1人が心がけること
人間はミスをします。
前述したように、機体の安全性能が飛躍的に向上し、国が安全対策のため様々なルールや法律を定めていても、操縦士の資質次第でドローンは便利なものから危険なものに変わります。
機体からの警告を無視して飛行させてみたり、法律を学ぶことなく飛行させてみたりするのは論外ですが、つい見落としてしまった、勘違いしてしまったということが無いようにしなくてはなりません。
では、ドローンを正しく安全に使用するために必要となるスキルとは何でしょうか。
知識
法律・ルール・ドローンの仕組み
技術
操縦・状況認識・状況判断・飛行補助者とのコミュニケーション
姿勢
安全な飛行を実施しようとする態度
知識と技術が備わっていても、姿勢がなければ安全は確保できません。
この3つのスキルの向上こそがドローンの安全対策なのです。
都市ネットではこの3つのスキルの向上を常に掲げて、操縦士の育成を実施しております。
5.空の安全を第一に!
空の安全を守るための、色々な立場からのドローンの安全対策についてご紹介してきました。これからもドローンの活用分野は広がることが予想されます。
「怖い」「戦争の道具」などのイメージではなく、安全対策が十分になされたうえで利用すれば、私たちの手助けをしてくれる道具になるのだと、少しでも思っていただけたら嬉しいです。
そしてドローンを操縦される方は「ドローンは落ちる」という事実を絶対に忘れてはいけません。
ドローンの性能が向上したことにより、機体の安全対策も飛躍的に進化しています。
ただ、「機体に安全機能があるから大丈夫だ」と思うのではなく、操縦士は「ドローンは落ちる」という事実を忘れることなく、常に「空の安全」について意識していただきたいと都市ネットでは強く願っています。