ドローンで農業をスマートに ―活用事例から導入方法まで―

近年、農業分野においてドローンの活用が急速に広がっています。
特に、農薬散布やセンシング技術を活用したスマート農業が注目され、省力化やコスト削減に大きく貢献しています。
本コラムでは、農業用ドローンの活用事例や導入メリット、初期費用等について解説します。
1.農業分野におけるドローンの活用事例
① 農薬/肥料散布・播種
② 運搬
③ 圃場センシング
④ 獣被害対策
⑤ 受粉
2.散布用ドローン導入のメリットとデメリット
① メリット
② デメリット
3.空小規模農家でも導入できる? 散布用ドローンのコストと補助金活用
① 初期コストの目安
② 運用コストの目安
③ 補助金制度の活用
④ 代行業者の活用
1.農業分野におけるドローンの活用事例

農業分野におけるドローンの活用で、まずイメージされるのは「農薬散布」ではないでしょうか。
農林水産省は2019年から「ドローンによる散布面積を100万ヘクタールに拡大」という目標を掲げ、積極的な推進を行ってきました。
しかしドローンは農薬散布以外にも多くの活用事例があり、今も様々な研究が進められ活用の場が広がっています。
まずはどんな活用がされているかご紹介します。
①.農薬/肥料散布・播種
ドローンを用いることで、農業従事者の負担が大きい散布作業の省力化が可能になります。
以前は主に水稲での利用が中心でしたが、近年では農薬の登録数増加やドローンの性能向上により、露地野菜や果樹など幅広い作物での活用が増えています。
②.運搬
収穫した農作物を集荷場へ運搬するのは重労働のひとつです。
とくに山間部や斜面での農作物の運搬では、トラクターなどが使用できず人力による作業が必要なケースもあります。
ドローンによる運搬は、作業の効率化だけでなく、肉体的負担の軽減にもつながります。
③.圃場センシング
農作物の生育状況や倒伏状況、生育ムラなどを確認するためにドローンの活用が増えています。
肉眼での見回りだけでは確認できなかった、圃場全体の状況を俯瞰的に把握することができます。
また、特殊な波長を撮影できるマルチスペクトラルカメラを搭載することで、葉の光合成の度合いや土壌の肥沃度などの測定もできることから、より詳細なデータに基づく農業経営が可能となります。
④.鳥獣被害対策
農作物への鳥獣害を防ぐために、スピーカーから出る音で害獣・害鳥を追い払う直接的な活用に加え、より効率的な対策検討に役立てるための生態調査でも活用されています。
⑤.受粉
現状は蜂や人力による受粉が主流ですが、高温化での蜂の活動量低下や農業従事者の減少などの課題を解決するため、ドローンを活用した受粉作業の実用化に向けた研究も進められています。
2.散布用ドローン導入のメリットとデメリット

では実際にドローンを導入する場合、どのようなメリットが得られ、どのようなデメリットが発生するのでしょうか。
散布作業における、ドローン導入におけるメリットとデメリットを紹介します。
①.メリット
a.作業の効率化
ドローンを活用する最大のメリットは散布作業の効率化です。
広範囲の農薬散布や施肥を短時間で行うことができるため、特に近年の異常気象ともいえる酷暑の中での作業が短縮するのは非常に大きなメリットです。
b.人手不足の解消
高齢化が進む農業において省人化が可能です。
また従来の働き方が変わることにより、スマート農業に興味を持つ新しい就農者を発掘できる可能性があります。
実際に当社のお客様で、息子さんが農業に従事されていなかった農家様もドローンの導入をきっかけに手伝うようになったとのお声を聞いております。
c.作業者の安全性
ドローンは遠隔操縦のため、農薬散布作業の際に農薬に触れる時間が少なくなり、農薬被曝のリスクを最小に抑えることが可能です。
②.デメリット
a.初期コスト・運用コストの負担
ドローン購入の費用に加え、点検や保険など運用コストも必要です。
実際にどのくらいの費用が必要となるかは 3-① で後述します。
b.技術習得の必要性
散布用ドローンの多くは、購入時にそれぞれのメーカーが実施する講習会の履修が必要です。
そして安全かつ効率的な運用にはある程度の飛行時間を重ね、操縦スキルを高めなければなりません。
その他にも、ドローンを飛行するための法律・ルール等を遵守するための知識を学ぶ必要があります。
3.小規模農家でも導入できる? 散布用ドローンのコストと補助金活用

前述したように散布用ドローンの導入には決して安くない費用がかかり、運用するためのランニングコストも必要です。
ここでは実際の費用がどのくらいになるのかを紹介するとともに、補助金や作業代行業者を利用することについても触れてみます。
①.初期コストの目安
散布用ドローンを購入する場合の費用は、機体の積載容量・性能により異なります。
自身の圃場に最適な機体を選定することが重要ですが、積載容量・性能はもちろん、金額も大事な選定ポイントです。
農林水産省の「農業新技術_製品・サービス集」には30機体以上の農業用ドローンが掲載されています。
以下の表はその内の5機体について当社が独自に価格をまとめたものです。

この5機体の他にも様々な価格のドローンがありますが、初期費用としては概ね100~300万円です。
この他に多くのメーカーでは、機体購入時における講習会の受講が必要で、講習受講費用は15~30万円(操縦経験等により変動)程度です。
②.運用コストの目安
また導入したドローンを運用するためには、保険や点検といった運用コストが必要になります。
主な運用コストの目安は以下の通りです。
賠償保険:0.5~3万円/年
動産保険:機体本体価格の7~10%/年
定期点検:5~30万円/回
この他にもプロペラやバッテリーなどの消耗する部品の交換費用も発生するため、導入する前にどの程度のコストが必要となるかを把握することが、計画的な経営・事業運営には必要です。
③.補助金制度の活用

このように、散布用ドローンを導入して運用するためには少なくとも百万円単位の資金が必要です。
そこでその負担をなるべく減らすため、国や自治体では補助金制度を設けています。
下記はドローン導入時に活用できる補助金の一例ですが、その他にも条件や目的などに応じた制度が存在します。
まずはお住まいの自治体等に確認してみてはいかがでしょうか。
【補助金制度例】
農業機械や施設の導入を支援し、農地の集約化や作業効率の向上を図る制度です。
ドローンによる農薬散布の他、生育調査やデータ解析なども対象となる場合があり、ICTやスマート農業の推進にも活用できます。
地域計画に基づいた取り組みや、条件不利地域での効率化にも対応しており、持続可能な農業経営を支援します。
中小企業等の革新的な取り組みを支援する制度で、農業分野でのドローン活用にも利用可能です。
たとえば、ドローンによる農薬散布やリモートセンシング、圃場データの解析といった新技術の導入や、業務の自動化・効率化に向けたシステム開発も対象となり、スマート農業の実現に向けた設備投資に活用できます。
※補助金の条件は対象年度によって異なる場合があり、また年度内でも予算等の都合により締め切られることがあります。必ず各公募の公式ページで最新の情報をご確認ください。
②.代行業者の活用
そしてもう一つの散布用ドローン導入の方法が「代行業者に依頼する」ことです。
特に作地面積が少ない場合は代行業者に依頼する方が、費用を安く抑えることができる場合があります。
ドローンの操縦はもちろん、メンテナンスなどの手間が省けるのもメリットです。
当社でも散布代行サービスを実施していますので、購入と代行のどちらがご自身の状況にあっているか分からないという方はぜひお問い合わせください。
【実績紹介ページ】
3.まとめ

いかがでしたでしょうか。
農業用のドローンは、作業の効率化や人手不足の解消等に貢献する一方で、導入には初期コストや技術的なハードルも存在します。
しかし、補助金や代行サービスの活用により、より多くの農家が導入しやすい環境が整ってきています。
当社ではドローンの販売から操縦講習、代行サービスまで一貫して対応しておりますので、ご不明な点があればお気軽にご相談ください。