関東大震災から100年 ―首都圏再開発の今―
近年、都市部の再開発が各地で進められています。
特に首都圏では、高層ビルの建設や特定地域を広く整備する大規模な開発に注目が集まっています。それらはなぜ今、急ピッチで進められているのでしょうか。
本コラムではその背景や注目ポイントについて解説します。
1.東京圏で進む大規模再開発
① 渋谷・八重洲・新宿… 進む駅周辺の再開発
② 背景には国際競争力強化への期待感
2.未来のまちづくり、都市計画の姿とは?
① 政府が目指す首都圏のまちづくり
② まちづくりにも必須の交通量調査
3.交通量調査の事例
【事例①】都市型ホテルの再開発に向けた調査
【事例②】歩行者天国導入に向けた影響調査
1.東京圏で進む大規模再開発
1923年の関東大震災から約100年、東京をはじめとする首都圏各地で進む再開発は、老朽化対策のみならず、政府や事業者の戦略もありそうです。
①.渋谷・八重洲・新宿・・・ 進む駅周辺の再開発
複数の高層ビル、整備された道路や遊歩道、複数の快適な広場など、ここ数年で駅周辺の空間が劇的な変化を遂げた渋谷地区。
かつては「迷宮」とも言われた駅構内の複雑な通路も、乗り入れる鉄道各社による整理事業によって、利用者の導線に配慮した移動空間が整備されています。
その他、東京駅に隣接する八重洲地区、新宿駅西口駅前の大規模工事、池袋駅周辺の公園整備、麻布台ヒルズの竣工など、様々な再開発が現在進められているのです。
②.背景には国際競争力強化への期待感
これらの大規模な再開発が進められている背景のひとつには、政府の国際競争力確保に向けた戦略があります。
以下の図は、主要国のGDP(国内総生産)の変化をグラフ化したものです。
出典:国土交通省道路局「WISENET2050・政策集」
これによると、中国やインド、アメリカがこれまで、そして今後も成長を続ける予測であるのに対し、日本の成長率は低いことがわかります。
最も大きな要因には、日本が人口減少社会に移行していること、それにともなう生産年齢人口の減少が挙げられます。
しかし、それではこれからの競争に打ち勝つことは難しいことから、優秀な人材が世界から集まるような国際ビジネス都市を目指そうとしているのです。
加えて、都市部においても高齢者が暮らしやすく、様々な事情を抱えた人たちが安心して働けるように、コンパクトでスマートなまちづくりが進められています。
2.未来のまちづくり、都市計画の姿とは?
では、政府は未来のまちづくり、都市計画について、どのような絵を描いているのでしょうか。
ここでは、国土交通省の首都圏整備に関する指針を基に、未来の都市の姿についてご紹介します。
①.政府が目指す首都圏のまちづくり
政府による首都圏整備計画では、東京都以外にも周辺県を含めた広域での取り組みが進められています。
その中で、東京圏においては「業務機能をはじめとした諸機能の集積の各として重点的に育成・整備」するとともに、一極集中の解消に向けた取り組みも必要だとしています。
またスマートシティの推進や、インバウンド需要を見越した観光振興なども重要な施策です。
しかしながら、事業領域における今後の国際競争力を考えたとき、交通アクセスや技術集約などの観点から、特定の地域に開発が集中しているが実態です。
具体的には、都市再生特別措置法に基づき、重点的に市街地整備を進める「都市再生緊急整備地域」には、例えば麻布台ヒルズや、羽田イノベーションシティなどがあります。
また、東京圏国家戦略特別区域の制度を活用した八重洲二丁目南特定街区も、規模の大きな再開発です。
こうした将来のビジネス拠点化を睨んだ大規模な開発が今、集中的に行われています。
出典:国土交通省道路局「WISENET2050・政策集」
②.まちづくりにも必須の交通量調査
こうした再開発を進める上で欠かせないのが、交通インフラの整備です。国際都市を目指すならば空港や港湾の整備、都市内を移動する上で欠かせない交通や道路の整備など、快適な移動や滞在を可能とする空間の整備を進める必要があります。
また、再開発事業は大量の資材を搬入する車両が頻繁に出入りします。それによる交通渋滞の発生や、周辺環境への悪影響なども避けなければなりません。
実際のまちづくりは、大規模な工事や輸送を伴います。その計画を立て、影響を評価し、円滑な事業の遂行に欠かせないのが、設計のベースのひとつとなる交通量調査です。
3.交通量調査の実例
ここでは、都市計画や再開発事業など、まちづくりにおける基礎情報となる交通量調査について、当社が行った事例をご紹介します。
【事例①】都市型ホテルの再開発に向けた調査
2つ目の事例は、ビジネス街に立地する大規模な都市型ホテルの再開発に関する調査です。
今後複数年をかけて旧ビルの解体や整地、さらに新ビルの建設が予定されています。
それぞれの工事では多くの車両が出入りしますが、立地が都市部の交通量が多い地域であることから、出入り車両による渋滞の発生や、近隣ビルへの影響などを把握する必要がありました。
そこで交通量調査では、ホテルの周辺道路における現状の交通量をベースに、工事期間中の渋滞予測を含めた交通影響評価を実施しました。
すると、10年単位で続く工事のスムーズな遂行に資する報告書だったとの評価をいただきました。
【事例③】歩行者天国導入に向けた影響調査
ある自治体が地域内で歩行者天国の運営を企画。
その実現に向け、通行を止める道路やその周辺の道路も含めた影響を検証する目的で、交通量調査を実施しました。
これは道路の通行止めを伴う社会実験であり、通常時の交通量調査とは異なるため、事前に綿密なシミュレーションを行って本番に臨みました。
調査結果は通常時と社会実験時の交通量について比較し、その違いがわかるように工夫をして、交通影響に関する報告書を作成しました。
その際には、多くの交通量調査や社会実験に携わってきた経験に基づく知見が役立ちました。
3.おわりに
いかがでしたでしょうか。
交通量調査は、道路計画やまちづくりのベースとなる重要な取り組みです。
当社は、経験豊富なスタッフにより、さまざまな交通量調査に対応可能です。お気軽にお問い合わせください。